信じる心

こんにちは。オンラインショップ担当の小林です。

息子が幼稚園の年長から通っている少年剣道部。
小学1年生の1学期、初めて道着と袴を着て、垂れ・胴・小手の「防具」をつけました。
当時、親の私も防具のつけ方が全くわからず、お手上げ状態。
そこで、稽古時間の前、周りの方に助けていただきながら息子の着装をしていました。
息子が胴紐を背中で蝶々結びにできるようになったころ、稽古中に面をつける練習が始まりました。

1学期最後の稽古日のことです。
この日も先生から面をつけるよう指示があり、子供たちは一斉につけはじめました。
正座をし、手ぬぐいを頭にまき、その上から面をかぶり、頭の後ろで面紐を結びます。できた子供から「はい! 」と立ち上がります。
1人、また1人と立ち上がる子供たちのなかで、息子は失敗を繰り返しています。
頭にまいた手ぬぐいがフンワリしていて、案の定、面をかぶる際にほどけてしまうのです。
隣の子が助けに入っても、うまくかぶれません……。
そして、とうとう1人になってしまった息子は、焦りやイライラ、悔しさから泣き始め、手ぬぐいを床に投げつけてしまったのです。

しかし先生は、正座を崩すことなく
「イライラしたって駄目だぞ」と静かに一声かけると、じっと見守っています。

私の心はずっと、助けに入ったほうがいいものかと揺らいでいました……。
“でも、稽古中は先生に息子を託している。先生がずっと息子を見守っているのだから、私もその中に立ち入ることはできない”と、動揺を押さえて見守ることにしたのです。
ただ、息子への心配、練習をしなかったことへの後悔、先生や待ってくれている子供たちへの申し訳なさ、いろいろな思いで苦しかったのをおぼえています。

結局、この日は面をつけることができず、待ってくれていた子供たちも稽古をすることはありませんでした。

肩を落とし私のもとへ戻ってきた息子。
“もしかしたら、もう辞めると言うかもしれないな……”
そんな不安も抱えながら、息子を信じて
「今日のことは無駄にしちゃだめだ。こうなったら、家で猛練習するしかない! 」と声をかけ、家に帰るとすぐに夫へ話をしました。
そして、この夜から家族で一丸となって面つけの練習に取り組むことにしたのです。
夏休みの間、実家へ帰省するときも、遊びで泊まりに行くときも必ず防具を持って行き、毎日1回は面をつけるようにしました。

そして、2学期の稽古始めの日。
先生の指示で一斉に面をつけはじめた子供たち。
そのなかで、息子は1番に立ち上がったのです。
本人も嬉しそうでしたが、
“あの時、剣道に背を向けてもおかしくなかった息子が、さらにパワーアップして復活した”と、そんなふうに思えて私も本当に嬉しかったです。

ここで、『別冊ニューモラル イラストで学ぶニューモラルの心 感謝と喜びの子育て』から一節をご紹介します。
“「お願いです。構わないで! 」
ある新聞の投書欄に、次のような記事が紹介されていました。
――雨上がりの午後の電車内の出来事だった。母親に伴われ頭にヘルメット、両ひざ、両ひじにサポーターをつけ松葉づえを使う、6、7歳の少年が乗り込んできた。身障者のようだった。中央部に着席した母親の手前で、つえの先が濡れた床で滑ったのか、少年が転び、大声で泣き出した。乗客の1人が抱き起こそうとしたとき、母親から「お願いです。構わないでください」。さらに「泣いたって、だれも起こさないわよ。それでは立てない。足はどうするの! つえを離して」など、矢継ぎ早に、叱り、励ます声が飛んだ。乗客はかたずをのみ、視線が親子に向けられた。
少年が泣きながら苦闘の末、やっとの思いで、つえを頼りに立ち上がった瞬間、母親は濡れて汚れた着衣もいとわず、しっかりと少年を胸に抱きしめた。
期せずして車内に拍手がわき、会釈する母親はもちろんのこと、多くの人がこの情景に目を潤ませていた――”

先日、小学生として最後の少年剣道部の稽古日を迎え、6年生たちはそれぞれの思いを作文にして発表しました。
息子はそのなかで
「あの時、先生があえて何もしなかったおかげで今がある」と書いていました。

先生のぶれないご指導に、先生の芯の強さと“この子なら、きっと乗り越えて、さらに大きなものを掴むに違いない”と信じる心を感じ、親の私自身も学ばせていただきました。
とても感謝しています。

 

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