赤いカーネーション

こんにちは。オンラインショップ担当の小林です。

月に一度、ランチをご一緒させていただく方がいます。
数年前に務めていたパート先のお客様だったその方は、ものすごくはっきりとものを言う方。
その方が初めてご来店された日に、あることでご注意をいただきました。その翌日、偶然にもスーパーでバッタリとお会いし、私から声をかけました。
「昨日は、ありがとうございました。ご指摘いただいた件は、私から店長に話をさせていただきました」
「あら、あなた。私も商売をしていたから、一度会ったお客の顔は忘れない。あなたも、私の顔を忘れなかったわね。私は、はっきり言うから気を悪くされたかもしれないけれど、お店のためになればと思って言っていること。あなたも、いろいろあると思うけど頑張るのよ。
あなたがパートに入っている日はいつかしら? 」と。

その日から、私に会いにお店へ来てくださるようになったのです。

それから1年。パート先が閉店することになり、パート最終日を迎えました。
その日も来てくださった、その方は
「まさか私に、自分の子供と同じくらいの歳のお友達ができるなんて……。なかなか、ないことだと思うの。だから、このご縁を大事にしましょう。“毎月、この日に”なんて、会う日をきっちり決めなくてもいいから、会えるときは一緒にランチを食べに行きましょうね」と、そうおっしゃってくださいました。

先日、約束していたランチ会の日に、ご自宅を訪ねたときのことです。
約束の10分前に着きインターホンを押すと、しばらくして
「今、庭の植木に水をあげているところだから、もう少し待って! そこから横の道を通って、庭に回って来てちょうだい」と、声がしました。
言われたとおりに横の道から庭の方へ回り、外から庭を少しのぞくと、カーネーションの赤い色がパッと目に入りました。

「見て、今年はカーネーションが満開よ。ほら、入って来て。まだ全部に水をあげられていないから」と、手招きしています。

庭へ入ってみると、そこにはたくさんの植物たち。
その方は、庭の端から端まで、木や草花の一つひとつに目を配り、腰を丸めたり背伸びをして、いろいろな角度から丁寧に水を撒いていました。
なんだか、愛情を感じる庭です。

撒き終わった後、近所のお店に二人で歩いて行きました。
食事が済むと
「帰りに、ちょっと家にあがっていきなさい。消化を助けるから大根を食べてほしいと思って、浅漬を用意して来たの。お茶でも飲んでいきなさいよ」と誘ってくれたのです。
すごく細かな心づかいに感動し、お邪魔させていただくことにしました。

そうして、ご自宅に向け二人で歩いていると、通りかかった店先に赤いゼラニウムの鉢植えが。
「まあ!見て、この赤、素敵ね」と、その方。
「赤いお花がお好きなんですね」
「そうよ。だって、赤って見ているだけで元気をくれる気がするもの! 」と。

ご自宅に帰り着き、大根の浅漬けとお茶をいただき、そろそろと重い腰を持ち上げた私に、
「今日はあなたに、一輪挿しの花瓶を3つ差し上げるわ。今、庭のカーネーションをちょっと切って持たせてあげるから、花瓶に差して家のいろいろな場所に置いておくといいわ」と、カーネーションを6本、小さなブーケにして持たせてくれたのです。

その方が、愛情かけて育てた赤いカーネーション。
赤は元気をくれる色。
“この花を、あなたの目につく場所に置いて、会えない間もあなたが元気でありますように……”と、その方の愛情をたっぷりと体感させていただいた幸せな一日でした。
そして自宅では、玄関、台所、洗面所と、一輪挿しを見るたびに心が癒されています。

その方は、私をお友達とおっしゃってくださるけれど……
大きな愛情と、その示し方を教えてくださる、
まるで母のような方です。

 

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