父が敬愛する小林秀雄

こんにちは。オンラインショップ担当の望月です。

私の父は、昔から『無常といふ事』や『考えるヒント』等で有名な評論家の小林秀雄を敬愛しています。彼の書く文芸評論の鋭い視点やそれを表す美しい文章は多くの方を魅了していますが、私の父もその一人で、世の中で誰か一人偉人を調べるのなら「小林秀雄」を調べると言うくらいのファンです。だから自ずと家族で旅行するときは、小林にまつわる場所へよく行きました。とりわけ小林のお墓参りが子供心に印象に残っています。

小林のお墓は、神奈川県鎌倉市の東慶寺にあります。一般的なお墓には、〇〇家とか、〇〇家之墓とか、名前や言葉が彫られてありますが、彼のお墓には何も彫られていません。そして、ほかの墓とは離れたところにあるので、その場所を知らないかぎり、見つけることは難しいです。もし、訪問する機会があるのなら、受付で地図を見せてもらえますので、それを見てからお参りすることをお勧めします。

私が小学生のときに、はじめて彼のお墓にお参りしてから、もう何度足を運んだことでしょうか。彼の著作を読めば読むほど、彼のお墓参りをしたくなるから不思議です。いつの間にか私も彼を敬愛していました。

ここで、占部賢志さんの著書『歴史の「いのち」――時空を超えて甦る日本人の物語』から一節をご紹介します。
”さて、小林(秀雄)さんはぐっと歩み寄ってこう言われる。
「君の肩には、おっかさんのすべてのものがかかっているんだ。つまり歴史を考えるとは、君のおっかさんのことを考えることだぞ」
「もっと昔のことを考えてごらん。千年前のことだって同じだ。君のこの肩には日本の千年の歴史の重みがかかっているんだよ」
そう言いながら、小林さんは幾度も肩を叩かれた。そして、しみじみとした声で、噛んで含めるように諭された。
「いいかい、君の身体には、祖先の血が流れているんだよ。それが歴史というものなんだ。そこをよくよく考えなくちゃいけない。誰でも宿命を持ってこの世に生まれてくるんです。そのことをきちんと自覚しなければだめだ。そして、生きてきた責任を果たさなければならないんだよ」
およそ30分に及ぶ深更の「個人授業」は、こうして幕切れとなったのである。”

小林が晩年著した『本居宣長』を読み、本居宣長のお墓参りに行くことが念願になりましたが、それは今年果たすことができました。今度は山桜が咲くころに伺えたらと考えています(先ほどご紹介しました本に、山桜と小林秀雄にまつわる内容も書かれています)。
私が小林秀雄を好きになったのは偶然でしょうか。いや、必然だと思います。だって、私の身体の中には父の血が流れているのですから。

 

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