「ただいま」を、聞かせてくれるだけで

こんにちは。オンラインショップ担当の小林です。

数年前のある日。
当時、小学生だった息子と通っていた地域の森の保全活動で、
「うちの子は勉強が嫌いで、テストの点数も悪くて困ったものです」と言った私に、
一緒に活動している年上の女性が
「私はね、子供の勉強で困ったことはないの。
家族全員が毎日、誰一人として欠けることなく無事に家に帰ってくることが嬉しくて仕方がなかった。ただそれだけだったのよ。だから、子供が勉強できなくてもいいの。“お母さん、ただいま~”って声を、聞かせてくれるだけで。それこそが親孝行よ」と、目を輝かせて教えてくれました。

さて、今年の春、中学生になった息子。
1学期の期末テストの答案を持ち帰ってきたのですが、その点数のあまりの低さに私は愕然としました。
“これはまずい!”
途端に、息子のことが心配になりました。
ある大先輩に、そのことをお話しすると
「あなたは一体、息子さんが何点とってきたら安心できるのでしょうか。私のときは、子供たちがひどい点数をとってきても“次、頑張れよ”と、ひと言かけるだけでしたよ」と。
思わず言葉が詰まってしまいました。
“たしかに、安心できる点数なんてないかもしれない……”
焦っていた心に冷静さを取り戻しながらも、
“今の私に「次、頑張れ」のひと言だけを息子に伝えることが出来るだろうか? ”と、その難しさを感じました。

そうこうしているうちに、2学期の中間テストの答案が帰ってきました。
そして今度は、前回よりもさらに低い点数だったことに、かなりの衝撃を受けたのです。
その夜は、自分が息子に何を言ったのか、正直、覚えていません……。
ただ、息子はしょげていました。
私は、ふて寝をしながら落ち着きを取り戻すにつれ、
“何かが違う。いや、私はまったく違うことをしている。息子を励ますべきなのに、将来を心配する自分の不安を押し付けて、その挙句にふて寝をしているんだから! こんな私が、息子をどれだけやる気にさせることができるのだろうか。私は、自分の望むこととは全く逆のことをしているんだ”と、そう思いました。

それから数日後、ビリギャルの母親として有名な橘こころさんの講演会に友人と出かけました。
「こどもを信じれば、子育ては愉しくなる! 」という演題です。
そのなかで先生は、“子供を信じること”“存在自体を褒めること・認めること”“怒らないこと”で、子供に強い自己肯定感をつける大切さを教えてくださいました。それが、ワクワクすることを見つけたときに「自分ならできる! 」と自分を信じ、爆発的な能力を発揮できることにつながるのだと。

帰り道、街中を歩きながら
「勉強ができなくてもいい。成績が悪くてもいい。毎日、無事に帰ってきてくれることが一番の親孝行だって、前に言われたことがあるの。その言葉が腑に落ちた講演会だった」と、私。
すると友人は
「確かに! でもね、やっぱり現実は違うよ。実際のテストの点数を目の前につきつけられると、そればかり言っていられない。だって、子供の将来が心配だもの!」と。
「そうだよね……」
私はそこから何も言えなくなってしまいました。その時、交差点にお供えされた花がパッと目に入ってきたのです。
数年前にこの交差点で、小学生が亡くなる悲しい事故が起こりました。それ以来、いつもきれいな花がお供えされているのです。私は、この花が枯れているのを見たことがありません。
「毎日、無事に帰ってきてくれる。そのことを何よりの幸せと喜べる、それだけで、すべてがいい方向につながっていける気がするね」と、私。
条件なく存在自体を慈しむこと。それは子供の将来についても最高の応援の仕方なのだと、そう思いました。

ここで、『美しい心、輝きのある人生』から、一節をご紹介します。
――親や教師など、子供に大きな影響力をもっている人が、子供をどのように評価しているかが、子供の能力の発達に大きな影響を与えます。それらの人が子供の性格や能力について信頼していれば、子供はのびのびと信頼にこたえて育っていくのです。もちろん逆の場合も考えられます。子供は親を必要とする存在であるだけに、「バカね」、「だめな子ね」というような親の無神経な言葉によって、自分の姿をその言葉どおりだと考えてしまいます。このような否定的な言葉が何回もくり返されると、やがて自分がほんとうにだめな子、悪い子だと思いこみ、両親や周囲の人を困らせることをするようになるのです。子供を信頼し、期待し、励ます言葉は、子供に自信と勇気を与え、能力を発達させていきます――

息子の将来を不安視する声かけよりも、慈しみ信じる気持ちから生まれた声かけができる。
そんな母をめざしたいです。

 

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