上靴を洗わなかった娘

 こんにちは。オンラインショップ「道徳の本屋さん」店長の佐野です。
私には8歳、5歳、2歳の3人の子供がいます。ご飯を食べずにお菓子ばかり食べたり、なかなか寝つかず、いつまでも遊びまわったりする子供たちを相手に悪戦苦闘し、最終的には大声で叱りつける日々を過ごしています。そんな、つい先日の話です。

とある日曜日の夜。明日の小学校の準備をしていた長女が「洗うの忘れてた」と汚れた上靴を渡してきました。いつもは長女がお風呂に入った時に上靴を洗うのですが、その日はすでに入浴しており、あとは寝るだけというタイミングです。これから靴を洗わせて、寝るのが遅くなるのは避けたいところ。私が洗ってあげないといけない状況でした。

その日は一日中、子供たちの相手をしていて疲れていた私。「もう、なんでこんなタイミングで上靴出すの!? お父さんも洗えないよ」。あわよくば子供たちと一緒に寝ようと思っていたこともあり、ついつい語気が強くなります。そんな私の反応を見て、娘は怒りとも哀しみともつかない顔をして「洗わないままの上靴を履くから、洗わなくていいよ!!」と声を荒げ、そのまま布団にふて寝してしまいました。

ここで『ニューモラル』604号「うれしい言葉 耳の痛い言葉」(令和元年12月号)の一説をご紹介します。
――例えば、幼いわが子がよりよく育っていくことを願えばこそ、褒めるばかりではなく、悪いことをしたときには厳しく叱ることもあるでしょう。その根底にあるのは「子供を思いやる心」であるといえます。(中略)「思いやり」の手がかりは、相手と自分の立場を交換して考えてみることです。「もし自分が失敗して落ち込んでいるときに、こんなふうに言われたとしたら……」などと想像してみると、現在の相手の立場やその心情も、冷静に見つめることができるのではないでしょうか――

寝る直前になって、洗う必要のある上靴を出してきた長女。きっと彼女も心の中では“悪いことをしたなぁ”と反省していたことでしょう。それに対して、私はそんな彼女のことを思いやった対応ができていただろうか。“こんなに疲れて、眠たいのにまだやることがあった”という不快感を、ただ娘にぶつけただけではなかったか。本当に娘のことを思いやれていたら、金曜日に私が帰宅して、娘の顔を見た際に「もう、来週の準備をしたら」と声をかけられたかもしれません。それより前に娘が一人で気づき、準備に取り掛かるような知恵が出せたかもしれません。

子供たちが寝静まったあと、なんとか布団から出た私は、先ほどの娘への態度を反省し、洗面所で上靴を洗うのでした。翌朝、真っ白になった上靴を娘に見せた私。娘の喜ぶ顔を見て、私の心も少しは白くなったような気がしました。

 

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