ゲンカイツツジが咲きました

 こんにちは、忍足(おしだり)です。
 ここ千葉県柏市では、4月も後半に差し掛かるも、温かかったり肌寒かったりという不安定な天気が続いています。皆さんのお住まいの地域はいかがでしょうか。
 たまたま温かかった日に、他部署へ行くため園内を移動していた時のことです。歩いていると、ひときわ立派に開花している木がありました。

“春だなあ”と思いつつ、立ち止まってその花を眺めていたとき、突然、よみがえってくる1年半前の記憶。
「あ、この木はダライ・ラマ法王猊下が植樹されたゲンカイツツジだ……」
 思わず、そんな独り言をもらしてしまいました。

 2018年11月19日、当研究所はダライ・ラマ法王14世をお招きし、柏キャンパスで特別講演会を開催しました。そのときのテーマは「慈悲心は世界平和の源」。私はその講演を、広報関係者のみに許可された二階席で拝聴する機会を得ました。
 法王は、ゆっくりと、そしてはっきりと「自分は特別な人間ではなく、地球上に存在する70億の人間の一人にすぎない」と話し始めました。そして、時にお釈迦様の教えを引きながら、世界のそこかしこに溢れる負の感情に憂い、暴力の時代から話し合いの時代へと変遷する未来を希求されました。
 講演の後、法王は、麗澤中学・高等学校の生徒、麗澤大学の学生から質問を受けられました。一番最初に質問したのは、中学2年生の男子生徒でした。その質問は、
「日本の好きな食べ物は何ですか?」
だったのをよく覚えています。チベット仏教の最高指導者に、その質問はいくらなんでもフランクすぎるのでは、と思ったからです。でも、緊張でガチガチになっている男子生徒の質問に、法王は相好を崩して「うどんが好きです。あと、日本のお米はおいしいですね」と答えられました。会場からは笑いが起き、それまで固かった雰囲気が一気に和らぎました。
 この講演でお話しされた内容をまとめた本が『今こそ、ダライ・ラマ~慈悲は世界平和の源~』です。

 講演内容はもちろん、瑞々しい感性に溢れる子供たちからの質問と法王の率直なお答えも掲載されています。また、法王の講演に先立つ2018年2月18日に行われたチベット亡命政府のロブサン・センゲ首相による特別講演も収録されています。
 本書は、ダライ・ラマ法王と日本一距離が近い講演録だと思っています。この本を紐解くたびに、当時の風景がまぶたに浮かんできます。
 法王がお手植えになられたゲンカイツツジは、冒頭に書いたようにすくすくと育っています。貧困や差別、種々の紛争等、それらから世界はいまだ脱することができずにいます。しかし、ダライ・ラマ法王がおっしゃるように、慈悲心を持って日々を過ごしていけば、よき未来は近づいてくるのではないかと感じます。満開のゲンカイツツジと同じく、世界に慈悲の花が咲きますように、
心から祈っている今日この頃です。

※当時の様子については、今回ご紹介した本に掲載されていますが、公式HPで見ることができます