支え合う喜び
こんにちは。「道徳の本屋さん」の忍足です。
まだまだ新型コロナウイルスの猛威は収まらず、ゴールデンウィークも半ばに差し掛かかって気合を入れようとしたところに緊急事態宣言の延長が……。“おいおい、勘弁してくれよ”“まあ仕方がないか”という二つの感情が混ざり合うような気がしました。あらためて気を引き締め、感染拡大の防止に務めようと思った次第です。
余談になりますが、当研究所道徳科学研究センターの大野正英氏のエッセイ「新型コロナウイルスについて考える」を公式ホームページにアップしております。メディアは一様に政府の対策を叩く傾向にありますが、道徳的視点から今回の事態を冷静に論じています。興味のある方はご覧いただければ幸いです。
さて、息子が通う中学校でもゴールデンウィーク明けに遠隔授業が開始されました。今回の事態を受けての施策となったことは残念ですが、それでもおかげでなんとか授業再開の運びとなりました。私としては、IT技術の発達に驚き、便利な世の中になったものだと感心するばかりです。
緊急事態宣言以前より外出を極力控えていたことで、子供とともに過ごす時間が増えました。職場の同僚との間でも子育てについて話題に上ることが多くなりました。先日は、同僚Kさんから以下のような話を聞きました
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「子育ては、妻に任せて私はほとんど関わってこなかったんだよね。唯一関わったのは入学式や卒業式、あとは運動会のようなイベントで、それも勤務の関係で出ることができないことが多かったなあ……」
そう語るKさんには、4人のお子さんがいます。関わってはこなかったとは言うものの、それでも子育ての秘策やヒントを持っているのだろうと思い、聞いてみると想像とは違った答えが返ってきました。
「自分がやってきたことに対してはアドバイスできるのだけど、やってないことに関してはできないものなんだよね。でも、子育てのプロである妻から、『子供が一人前になって、親も一人前になるんだよ』って言われてるの。そう言われちゃうと、責めているわけではないのだろうけど『あなたはまだまだ半人前だよ』って言われているような気がして、身が縮こまる思いがするんだ」
そう言って目を細めます。上の二人のお子さんは結婚しており、すでに孫もいるKさん。お子さん方が自宅に来た折には、「なるべく子供に関わりなさい。子供は毎日毎日変化があって、昨日と今日、今日と明日、一日として同じ日がない。それゆえ、いろいろな発見があるので、子供との関わりを大切にしなさい」と、昔の自分に言い聞かせるように、わが子に伝えているとのことでした。
『ニューモラル 心を育てる言葉366日』の中に、こんな言葉があります。
――親は子供を育てるとともに、「自分自身も子供によって支えられており、その存在に感謝しながら一緒に育っていく」という視点に、あらためて気づくことが大切でしょう。
日々の生活の中で、親と子が支え合いながら生きている喜びを、できるだけたくさん味わっていきたいものです。また、そうした機会を見いだせるような「心のはたらかせ方」を大切にしていく必要があるのではないでしょうか――
Kさんの話を通して、上記の一節を思い出しました。
子供を育てているのは親であるなら、親を育てるのは誰なのか。「自分自身も子供によって支えられており、その存在に感謝しながら一緒に育っていく」という視点を忘れてはいけないのでしょう。こんな時だからこそ、親子をはじめ家族の関わりを深めていこうと思った次第です。