どんなときでも

 こんにちは。【道徳の本屋さん】スタッフの小林です。

 新型コロナウイルスによる影響がクローズアップされたころのことです。
 叔父からかかってきた電話を切るやいなや、夫が、
「聞いて!  聞いてよ! たいへんなんだ! お母さんの様子がおかしいみたいなんだ」と、血相を変えて大きな声を上げました。

 義母は、私たちの家から車で約1時間半の場所に一人暮らしをしています。すぐ近くに住む叔父は、そんな姉(母)を案じ、普段からあらゆる場面で気にかけ、助けてくれていました。この日も、ふと気になり家を訪ねたところ、いつもと何かが違う姉(母)の様子に気づき、私たちに電話をくれたのです。

 動揺する夫に
「まずは落ち着こう! コロナの疑いがあるのなら……」と、診療の手引きに手を伸ばした私。
 すると夫は、
「いや、叔父さんの話によると、コロナではないみたい。いつもはきれいに整頓されている部屋が散らかりっぱなしで変だし、目も虚ろらしい。脳の病気かもしれないから救急車を呼んだほうがいいんじゃないかって」
「そうか……。昨晩のお母さんとの電話では、あんなに元気そうだったのにね」と私。
 すると夫は“まずは母と話してみよう”と、すぐに電話をかけました。

 電話に出た母と少し話をして、その話し方に夫も違和感を覚えました。そこで叔父に、
「たしかに、様子がおかしいですね。頼んで悪いのだけれど、救急車を呼んでもらえませんか。その後で、どこの病院に搬送されたか教えてください。自分もすぐにそこへ向かいます」
と伝えました。

 診断の結果、軽い脳梗塞。また、叔父からは、母の家を訪れたとき、ストーブが空焚き状態で一酸化炭素中毒の危険もあったと聞きました。
 どんなときでも大切な人を気にかけ、異変を見逃さず、適切に判断してくれる叔父。人と接触する機会が少なくなっている中で母がこうして助かったことは、叔父の兄弟愛が起した奇跡だとも思います。おかげさまで母の症状は軽くすみました。叔父には本当に頭が上がりません。

 コロナ禍の時期、人と接触する機会を減らすことは大切な人を感染から守るためですが、ただ会わないというだけではなく、気にかけることが基本。それはどんなときでもだよと、叔父から教えてもらった気がします。

 そんな話を【道徳の本屋さん】店長にしたところ、
「こんな本があるよ」と教えてくれたのが、島村善行著『いのち輝け』
「著者の島村さんは、消化器がんの専門医。本書の副題は「がんに学ぶ“こころ”と“からだ”」とあるけど、内容はがんのみに限らず、病に付随するいろいろなことについて書かれているんだよ。例えば、病にある中での心の持ち方や家族との付き合い方、どのような生き方をすれば質の高い人生が送れるのかなど。1500人以上の死と向き合ってきた島村さんの言葉には重みがある」と。

 私もこれから読むところです。