Withコロナ時代こそ、「ナッジ理論」に注目!(小さなきっかけを与えて、人々の行動を変える戦略)
月尾嘉男先生の語る、日本文化に内在する「ナッジ」の精神。
今、私たちができる『ささやかなこと』とは?
現代のコロナ禍において、Withコロナを乗り越えるための『ささやかなきっかけ』について考えてみました。
お盆に読み返した、亡父の戦時中の「日誌」
今年のお盆は戦後75年ということもあり、亡父が大東亜戦争従軍中およそ2年間にわたり記していた「日誌」を読み返してみました。
宮古島から埼玉に復員した父が、自分の父(私にとっては祖父)と交わした最初の会話に
「父さんが日露戦争でとった樺太を俺の時代に返したね」
とありました。
いつの時代も「人間が生きるか死ぬか」という事柄には、大変な重みがあります。
今日では、Withコロナ時代
コロナ禍により感染者数の微増減に一喜一憂する日々が続いてます。
その一方で、4~6月期のGDPが27.8パーセント減。これは戦後最悪であり、回復には3~4年かかるとする見方があります。そんな先行き不透明ななか、東京大学名誉教授・月尾嘉男先生は「新型コロナウイルスにより、国別では10万人あたり死者はイギリスが69人、スペインが61人、イタリアが58人、アメリカが48人、フランスが47人に対して、インドは2.9人、日本は0.8人、韓国は0.6人、台湾は0.03人とアジアは極端に少数である」ことを指摘されたうえで、「ナッジ理論」が日本の状況を説明するのに適切な概念であるとされています(『モラルビズプレミア』9月号掲載)。
ナッジ理論とは
「小さなきっかけを与えて、人々の行動を変える戦略」のことで、行動経済学で用いられる理論です。
2017年に、シカゴ大学の行動経済学者リチャード・セイラー教授がノーベル経済賞を受賞したことで、この「ナッジ理論」がアメリカ企業を中心に世界に広まりました。企業のマーケティング戦略で利用される他、イギリスやアメリカでは公共政策でも使われているそうです。
続けて月尾先生は、和辻哲郎著『風土』の「日本の人間は自然の威力に忍従し、淡泊に忘却することを美徳とする」を紹介したうえで、日本文化に内在するナッジの精神は、ポストコロナ時代のビジネスにとって有力な手段となるとされています。
新学期の小学校の様子から感じた「ナッジ」の精神文化
昨日、早めの新学期の小学校の様子がテレビで放映されました。
担任の先生は、
「暑い中コロナにもめげず登校できた自分を先ずほめてあげましょう。自分に拍手」
と言って、クラス中が盛り上がっていました。
何となく沈みがちな世の中ですが、子供たちに活気を与える『ささやかなきっかけ』となったことでしょう。
ビジネスでも、教育のなかでも。生活の中にある「ナッジ」の精神に注目し、Withコロナを明るく乗り切ってまいりたいと思います。