道徳授業にいかに生かす!?――児童・生徒の「話し合い」と「ファシリテーション」
学校、自治会、職場など、話し合いが必要になる場面はどこにでもあります。そのなかで「誰か、まとめてほしい!」と思うような経験をされたことはありませんか?
今回は、「参加して良かった」「有意義な時間だった」と思えるような話し合いには何が必要か? をまとめてみました。
暴走を始めた「帰りの会」、そこは戦場だった……。小学生時代の思い出ばなし。
現在、齢50を超える私にも、小学生だった時代があり、昭和40年代後半に「ぴかぴかの1年生」となりました。
小学1年生の私は、正直に言っておよそ優等生からは遠く、落ち着きのない子供ではありましたが、かといって悪ガキというわけでもなく、たまに担任の先生から注意を受けることのあるような児童でした。
そのころの私は、小1ライフを存分に楽しんでいたと思うのですが、大嫌いなものがありました。それは、一日の授業が全部終わり、下校直前に行われていた「帰りの会」なる名称の反省会です。
この帰りの会、本来の目的は一日の出来事を報告し合って、児童同士の意見を交わすことを目的とする会だったような記憶があります。ところが
お調子者で落ち着きがない私は、よくターゲットにされたものです。多数対一人(もしくは少数)の構図の中で、反論は無力。「誰かが謝らないと終わらない」から、とりあえずは「ごめんなさい」と言うだけ。当初の目的とは大きく逸れ、暴走を始めた「帰りの会」は、小学一年生にコントロールできるはずもありません。話し合いの場を運営することの難しさを痛感した忍足少年ではありました。
その後、中学・高校と進学し、いろいろな会議に参加する機会も増えていきました。うまくいく会議、うまくいかない会議とあるわけですが、先生が場を掴んでコントロールするとうまくいく傾向が高く、生徒に任せっきりにすると多くの場合は「会議は踊るされど会議は進まず」で、激論の末、何のために話し合いを行っているのか、ゴールはどこなのか、意見を交わしている生徒自身もわからなくなることもありました。「誰かまとめろよ!」と心の中で叫ぶことが何度となくあったものです。
最近になっては、趣味のサークルや町内会などで荒れて進展しない話し合いや、逆にしゃんしゃんで終わるが実りのない会議に接する機会が何度かあり、上手に話し合いを進めるためには何が必要なのだろうと思っていました。
会議の進め方って? 議論の仕方や円滑な話し合いをするにはどうすればよいのか
そのことを、きちんと教えている中学・高校はあるのかもしれませんが、私に限って言えば授業で教わった記憶がありません。
とかく日本人は自分から意見を発することが苦手と言われ、世界的にもそのような評価を受けることが多いものですが、上手な会議運営やディベート(討論)についての学習がなされていないところに原因があるのかもしれません。
このグローバルな時代に、積み残してきたものがあるように感じます。
そこでお勧めしたいのが、『ファシリテーションのすすめ――人をつなぐ 心をつなぐ』です。
本書の「はじめに」にこうあります。
皆さんはこんな話し合いの体験はありませんか?
「1人の人が話し続けていて、他の人は黙って聞いている」
「大きな声の人のひと言で物事が決まってしまう」
「いつの間にか、話し合いのテーマからずれていく」
「長い時間話し合ったのに、結局何も決まらなかった」
「会議が終わってから、決まったことに不平不満が出る」
この文章の後に「心当たりはありましたか?」と続くのですが、まさしく心当たりありまくりで、ここを読んだ瞬間、ぐっと引き込まれました。
ファシリテーションとは?
本書によると、
「ファシリテーションとは、話し合いなど参加型の場を進行するための心づかいと手法」と、あります。
―― 会議や話し合いなど参加型の場においては、主役は「参加者」です。この主役である「参加者」が、話し合いや会議において「何かをする」ことを促進したり、やりやすくしたりするための心づかいと手法です。
参加者からアイデアが出るように促したり、アイデアを出しやすくしたり、参加者が自らまとめられるように促したり、まとめやすくすることで、話し合いの流れや結果がよりよいものになるように支援・促進していきます。また、学校などの学びの場では、参加者の理解を促進したり、理解をしやすくしたりします。(6ページ 抜粋)
そして、その役割を担う人を「ファシリテーター」と呼びます。
ファシリテーターは意見を言わずに、あくまで参加者が考え、決断し、学ぶことを支援していきます。(6ページ 抜粋)
有意義な話し合いをしたい! そのためにできること
たとえば、机や椅子の並べ方
本書には9種類の並べ方が紹介されており、それぞれの特徴が載っています。
このほかにも「ホワイトボードの使い方」や、「話し合いの手順」なども紹介されており、とても参考になると思います。
小学校の話し合いの場でも使ってほしい! ファシリテーションの技術
技術と聞くと難しさを感じてしまいますが、本書を読むと大事なことは、お互いに尊重し、お互いが納得して決めることができるように心がけることのようです。
技術が追いつかなくても、その大事な心づかいを、皆で共有できるようになるといいなと思います。
もしも、自分が小学生時代にファシリテーションがあったなら……。
自分が小学一年生だった時代にさかのぼり、この本の内容をクラスのみんなにかみ砕いて伝えることができ、なおかつみんなにファシリテーションの考え方が行き渡っていたのならば、私ももう少し気楽な小学生ライフが送れただろうか。そんなことを考えます。
なんにしろ、学校で学ぶ機会がないのなら、自分で学べばよいわけで、本書の内容をこれから町内会やサークルに生かしていけばよかろうかな、と思っています。