深夜のインターホン
こんにちは。オンラインショップ担当の小林です。
ある夜、夫婦でウォーキングに出かけたときのことです。
家を出たのは深夜10時過ぎ。
少し先を歩いていた夫の足が、ある家のカーポート前でピタリと止まりました。
「あの車、ルームランプがつけっぱなしだ」
「本当だ…。もし消し忘れているならインターホンでお知らせするしかないけど、こんな深夜にインターホンが鳴ってモニターに知らない人が映っていたら、それだけで怖い思いをするに違いない。そんなところで“車のルームランプがついていますよ”と話しても、怪しまれてしまうかも……。
あっ! もしかしたら、荷物の積み下ろしをしている最中なのかも。きっと、そのうち家から人が出てくるんじゃないかしら」と、私。
そうは言ったものの、やはり気になって歩き出すことができません。
いっこうに家から人が出てくる気配がないのです。
「やっぱり、インターホンを押してくるよ」と、夫。
ピンポーン
……しばらくして
「はい?」と警戒している女性の声。
「あの、すいません。通りすがりの者ですが、お宅の車のルームランプがつけっぱなしです。ご確認ください」と、夫。
そうして、私たちはすぐに立ち去りました。
「やっぱり、怪しまれちゃったね」と、私。
すると夫は、
「でも、あのまま車のルームランプをつけっぱなしにしていたら、車のバッテリーがあがっちゃうもんな。もしそうなったら、あのお宅はいざ車を使うとなったときに、たいへんだ。朝の出勤時かもしれないし、誰かの緊急時って可能性もある。
そりゃ、相手に怖い思いをさせるのはよくないし自分が怪しまれるのもすごく嫌だけど、困る人がいるとわかっていて見て見ぬふりをしたら、そんな自分をきっと後悔する」と。
株式会社タフ・ジャパンの鎌田修広代表の著書『愛と絆で命をつなぐ「防災道徳教育」――今すぐ取り組む防災アクション』から一節をご紹介します。
――つながりとは、誰かが与えてくれるものではありません。まず、自分自身が行動を起こすことから始めて、1人の人間として地域や社会の仲間に加わった結果、得られるものです。その過程で自分の考え方や行動が変わっていくことを「かかわる(加 + 変わる)」と表現したりもするのです。つまり防災・減災は、住民1人ひとりに「自助」の覚悟とともに、お互いに助け合う「互助」「共助」の精神が不可欠なのです――
夫がインターホンを押すのを、ただ見ているだけで動けなかった私。
それは、相手に怖い思いをさせたり、相手から疑われたりすることで自分自身が傷つきたくなかったから……。
でも、傷をつけちゃいけない大切なものは、相手から見た私自身ではなかったのです。
人と人がお互いに助け合える“つながり”が得られるかどうかは、こんなところに違いがあるのでしょうね。