大きい声じゃ言えないけれど……
こんにちは。オンラインショップ担当の小林です。
地域の森の保全活動に参加しています。
昨年の秋、この森の植物に詳しい先輩が、
「この前、“秋の観察”をしたいと小学校から依頼があり、児童たちが森に来たからドングリについて話をしたんだ。ドングリといっても日本全国に約20種類以上もあって、この森には、その内の10種類もあるんだよ。ドングリの実を拾って、それがどの木の下に落ちていたかを調べてもらったんだ」と。
そんなに種類があることにビックリしていると、
「木の種類によって、細長いものもあれば丸いものもあるし、大きいものや小さいもの、帽子みたいな部分だって違いがあるんだよ。だから、花だって違うしね」と、先輩。
「花もですか? どんな花なんだろう……」と、私。
「花の季節は終わっているから、実際に見せることができないけれど、そうやって調べていくとドングリも、なかなか面白いでしょ。この前のドングリ拾いが、子供たちに少しでも興味を持ってもらえるきっかけになったら嬉しいな」と、先輩。
すると、少し間を置いて
「大きい声じゃ言えないけれど……。
同じ木の下で何チームもの子供たちがドングリを拾うでしょ。そうすると、どうしても後に来た子供は拾えなくて悲しい思いをする。それに、今の子供たちは穴があいて虫が入っている実や、黒ずんで汚く見える実は嫌がるだろう。悲しい思いをしたり、さわるのさえ嫌だったら、興味を持つどころではなくなってしまうから、ぼくが別の日に拾っておいた穴のあいていないドングリの実を、きれいに洗って、当日ササッと木の下に撒いておいたんだ。子供たちは嬉しそうに拾っていたよ。子供たちには内緒だよ」と、先輩。
ここで、『ニューモラル 心を育てる言葉366日』の9月20日「本当の“思いやり”」から一節をご紹介します。
“人の役に立ちたいという思いを行動に移すときは、お世話をする相手に対して絶えず心を配り、どうしたら喜びや満足、安心を与えることができるのかを考えることが、本当の「思いやり」なのではないでしょうか。お互いが相手の気持ちを察しながら、心を通わせていったとき、そこに優しく温かい人間関係が生まれていくことでしょう”
やがて、いつかは穴のあいているドングリも、黒ずんでいるドングリも、さわれるようになってほしい。興味を持ってもらうために、まずはここから……という願いを込めた先輩。
その話をしてくださったときの先輩は、充実感でいっぱいの幸せそうな笑顔をされていました。