”からかわれた” と “教わった”

こんにちは。オンラインショップ担当の小林です。
小学6年生の息子が所属している少年剣道部で、先日、大学生と合同の寒稽古が行われました。
稽古が始まり、顧問の先生は皆を前にして、次のようなことをおっしゃいました。
「全日本剣道連盟が掲げる剣道理念は『剣の理法の修練による人間形成の道』です。つまり、剣道の稽古を通して人間形成をめざすことが目的となっています。今日は、小学生と大学生が一緒に寒稽古を行います。大学生は、対する子供たちがどの程度の力なのかを見極め、見合った稽古をつけるように」と。
先生方と子供たちが混じる1列に、向かい合う大学生が対となり、打ち合いをする“かかり稽古”をしました。「はじめ」の号令で打ち合いが始まり、太鼓の音が終了の合図です。すると大学生が右隣へ1つづつ移動し、新しい相手となります。

背丈が2倍ある大学生に向かって“面”を打ちにいく低学年の子供たち。その一方で、大学生は“小手”を打たせようと誘導しているように見受けられます。なかなか上手くかみ合わない様子ですが、子供たちの着装が乱れているようなときは面や胴紐を結び直してくれる大学生たち。そのようなやり取りを経て、少しづつ互いにうち解けているように感じました。

稽古が終わり、息子に「どんなことを教わったの? 」と聞いてみました。
すると息子は、
「大学生に、技をかけられて竹刀を落としちゃったんだ。そしたら、“面”を連打された」と不満顔です。
「竹刀を落とされたら、落としてしまった方が反則をとられるし、反則が2回になると相手に1本入ってしまう。それに、もし審判がすぐ反則をとらなくても、その間に“面”が決まれば1本とられてしまうから、きっと“こんな技もある。竹刀を落とさないように”って、教えてくれたんじゃないかしら」と、私。
しかし息子はまだ納得していません。
「お母さんの言いたいことはわかるよ。ただ、からかわれたような気がしたんだ」と。
そこで、
「母さんね、さっき大学生同士の稽古を見ていたの。そしたら、竹刀を落としそうになり片膝をついて体制を崩した大学生がいてね。なんとか竹刀は落とさず片手で掴んでいた。一方で、相手の大学生は、体制を整える隙を与えることなく、その竹刀を落とさせるため“小手”を打ち込んでいた。打たれていた大学生は、なかなか体制を整えられずしばらく打たれ続けていたけど、どんなに打たれても絶対に竹刀を離さなかったのよ。
そんな光景を見ていて思ったの。人間形成のための剣道ならば、“小手”を打ち続けた大学生は、相手を見下したりせず竹刀を落とさなかった意思の強さを高く評価するんじゃないかしら。そんなふうに相手を尊重し、互いに切磋琢磨して磨き合う剣道をしているのなら、相手をつぶすようでは自分自身も強くなれないと、ずっと打ち続けたことが本当に正しかったかどうか、省みたりもすることもあるのではないかしら。
『共に磨き合えることに感謝し相手を尊重すること、つまり“相手に礼を尽くす”ことができているだろうか』と、繰り返し立ち戻りながら、そうやって人格を高めていくのでしょう。
あなたに“面”を連打したという大学生もきっと、剣道を続ける限り“相手に礼を尽くす”ことに立ち戻る機会があるはず。
だからあなたも、“相手に礼を尽くそう”と思うのなら『竹刀を落とす技がある。その技を受けることで面を入れられてしまうかもしれないから、気をつけなければいけないことを大学生から教わった』と、まずはそう思ってみてはどうかしら? 」と、私。
すると息子は、「わかった! 」とひと言。
当初は「からかわれた」と感じた息子ですが、その受け止め方を変えることで大きな収穫があった寒稽古となりました。

ここで、『ニューモラル 心を育てる言葉366日』2月20日「お坊さんの反省」をご紹介します。
――あるお坊さんのお話です。修学旅行で寺を訪れた中学生に法話を行った後、お坊さんがあたりの片付けをしていると、一人の男子生徒が五円玉をこちらに向けて投げつけ、笑いながら合掌しました。“なんて失礼な子だ”と思ったお坊さんは「せっかくだけど、このお金はお賽銭箱に納めてください」と伝え、五円玉を拾って渡しました。
その夜、風呂の中で昼間の出来事を振り返ったお坊さんの胸に、ある思いが浮かんできました。“あの子は、仏との「ご縁」に感謝して「五円」を投げたのではないか。感謝の気持ちを表わす方法が分からず、突飛な行動になったのではないか。私にそのことがすぐ理解できていれば「ありがとう。私からご本尊にお供えしておきます」と言えたのではないか。不快感を覚えた自分の心は、なんと固く狭い心だろうか……”と。お坊さんは受け止め方一つで、この体験を、心を省みる機会にしたのです――

“受け止め方を変えるだけで得られるものの質や量がこんなにも違うなんて”と、あらためて思う小林です。

 

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