地域の剣道大会で
こんにちは。オンラインショップ担当の小林です。
先日、地域の社会教育関係団体が主催する剣道大会が開催され、年長から小学生までの少年剣道部2団体と、中学校3校の剣道部の子供たちが一堂に集いました。この大会は、日々の心身の鍛錬と技術の成果を発揮し、また、交流することを目的として、毎年、開催されています。
今年参加した剣士たちのなかに、息子と同じ少年剣道部出身の1歳年上の友達の姿がありました。
彼は中学1年生・男子の部で順調に勝ち進み、ついには優勝したのです。
会場に駆けつけていた彼のお母さんに
「おめでとうございます。息子さん、すごい強いですね! 」と、声をかけました。
するとお母さんは
「ありがとうございます。試合が始まる前に『応援しないでくれ! 恥ずかしいから、絶対に名前を呼ばないで』と、きつく言われてしまいました。私も『おめでとう』と伝えたいのですが、難しい年ごろです」と笑って、次のようなことを話してくれました。
「少年剣道部で基本ができていたせいか、A中学校の剣道部では同級生と別のメニューをするなど先生から期待をされていたようです。しかし、その期待にうまく応えることができず先生との関係が悪化し、稽古を拒否することも。また一方で、同級生たちはどんどんと辞めてしまい、とうとう1年生男子の部員は息子1人になってしまいました……」と。
「そうだったんですね。いろいろあったなかで、よく辞めずに続けてこられましたね」と、私。
「厳しい環境のなかでも、剣道の面白さを本人が感じられるようになってきたのかもしれません。だから私も、息子が稽古に行かない日を“ひとまず良し”としました。そして何より、そんな息子を優しく受け入れてくれる先輩たちに恵まれました。息子が辞めずに頑張ってこられたのも先輩たちのおかげと言ってもいいほどです。なかでもキャプテンを務める先輩に、息子は憧れているんです。『あんな先輩に自分もなりたい』って言ってましたから」と、お母さん。
「まぁ! どんな先輩なのでしょう」と私。
「市の剣道大会のときだったかしら。試合中、対戦相手が体制を崩してしまったんだそうです。面を打つチャンスだったのですが、キャプテンは自分の腕につけていた防具の“小手”をはずし、対戦相手に手を差し伸べたそうですよ」と、キャプテンの人格者ともいうべきエピソードを話してくれました。
一気に私もキャプテンのファンとなってしまいました!
さて、大会最後の試合が始まりました。それは中学2年生・男子の部の決勝戦です。
そこにはキャプテンの姿が。
対戦相手は、なんと、息子と同じ少年剣道部の先輩でした。
彼はB中学校の剣道部で稽古をするほか、少年剣道部にも通い先生方に稽古をつけてもらうような熱心な少年。また面倒見もよく、少年剣道部の子供たちの憧れの存在なのです。
子供たちは、しぜんとコートの周りで正座をし、くいつくように見ています。
私は“両者とも頑張ってほしい”と、ただ願うばかりで、どちらかを応援することができなくなっていました。
それぞれの思いを胸に、会場内全員が見守るなか、試合は延長戦までもつれこみ、B中学校の剣道部の先輩が小手を決め優勝。会場内は、両者に送る拍手でつつまれました。
私も、二人に拍手を送りながら、ふと
“あぁ、地域の剣道大会はとても有意義だな”と、感じていました。
地域の人と人のつながりがあることで、所属している団体が違う相手の優れた人格を知ることができ、その感動は自分や周囲へも良い影響となることや、大きな大会に比べて入賞するチャンスが多く、その体験は確実にその後のモチベーションアップへとつながります。
ここで、『ニューモラル 心を育てる言葉366日』の5月24日「地域を生かす、自分を生かす」から、一節をご紹介します。
――都市化が進む中でも、地域社会の大切さを見直そうとする動きが全国各地で起こってきています。行政の協力を得ながらも、地域の抱えるさまざまな問題を住民一人ひとりの協力で解決していこうとするものです。例えば、「地域の大人が学校でお話をするなど、地域ぐるみで子供の教育を見守る」「一人暮らしのお年寄りを訪問し、食事を提供したり、話し相手になったりする」等の活動を行っている地域もあるでしょう。
それほど身構えて行うことではなくても、ほんの少しの時間と労力を他人のために役立てることで、地域に貢献することができ、また自分自身も喜びと満足感を得ることができます。何より、こうした活動を通じて自分たちが安心して気持ちよく暮らせる社会、子供たちが健全に育つ地域ができていくのです。――
今年で6回目の出場となる息子。小学生最後の大会となった息子の成績は1回戦敗退でしたが、中学生になっても剣道を続けたいとのこと。来年は中学の部で出場することになります。こんなふうに、毎年のように参加してきた私たちは、つい、来年も開催される大会なのだと考えてしまうところですが、必ずしも開催されると約束されているわけではないのです。そこには主催者や運営側の多大なるご尽力が隠れており、そのようななかで毎年のように続けてくださっている大会なのでしょう。
健全な子供たちの成長を願い、剣士たちに活躍の場を毎年提供してくださっている地域の社会教育関係団体の皆様に感謝です。