カラスとフクロウ
こんにちは。オンラインショップ担当の小林です。
地元の森の保全活動に参加しています。
最近、森にはカラスがとても多くなってきています。
ある日、鳥類が専門の先生をお迎えして講義を受けたときのことです。
「最近、カラスが多くなって困っています。せっかく、この森にはフクロウがいるというのに、カラスが追い掛け回していじめているのです。なんとかならないでしょうか」
と、質問が。
その言葉を聞くなり、先生は少し困った顔をして
「それは、自然のことですから……」と。
フクロウを守りたい皆さんは、次々に案を出します。
「たとえば、カラスの嫌な音を聞かせるとか、そういった対策はできないでしょうか」と、先輩。
「カラスが苦しんでいる声を聞かせたとしましょう。弱肉強食の世界です。弱っている声を聞かせたら、襲いにくるカラスが集まってくる可能性があります。なにより、周辺から苦情が出てくることのほうが問題です」と、先生。
「では、カラスにしか聞こえない周波数の音を出すというのは、どうでしょうか」と、先輩。
「残念ながら、カラスの可聴領域はヒトとたいして変わりません。ヒトより、微妙な音の差を聞きわけることはできますが……。
もしかしたら、カラスのペアリングを妨害することはできるかもしれません。でも、この森に縄張りを持つカラスがいなくなってしまうことで、集団で行動する若いカラスたちが集まってくる可能性が高くなります。逆に、もっと多くなるかもしれませんよ」と、先生。
すると、
「人間の都合で何かをやってみても効果が出るのは一時的であり、思わぬ副作用が出る可能性のほうが高いということですね」
「そうです。必ず副作用があります。
そして、この問題の本質はカラスではないのです。
この森が、フクロウとカラスが一緒に住むには狭いということなのです」
その言葉に、皆が深くうなづいていました。
“フクロウを守りたい一心”
その真剣さゆえに見落としてしまうことって、ありますよね……。
『ニューモラル』No.586 平成30年6月号から、一節をご紹介します。
――一私たちは自分で「よいこと」「正しいこと」をしていると信じているとき、自分1人の考えや価値観だけで判断し、相手や全体への配慮を忘れてしまっていることがあります――
どんなときも、ひと呼吸の余裕を持つ配慮を心がけようと思います。