教師のよろこび~学校のちょっといい話~


私には、若い担任の頃の忘れられない思い出があります。
4月、3年生のA君とB君の双方の母親から相談がありました。
A君は体力のある乱暴者です。特に標的にされたB君は知力・体力ともに幼く、たびたび被害にあっていました。前担任からは、「A君は手がつけられない。」、「B君は発達に問題がある。」と言われ、私は悩んでいました。そこで、家庭を訪問して母親から様子を聞き、授業中や休み時間には会話したり遊んだりして2人の理解に努めました。A君は漢字が苦手で、B君は全般に理解は遅いが心優しく、スケートもできました。そこで、
(1)漢字テスト前、放課後に班別の助け合い学習を続けました。努力の末、A君は合格点を取り、皆から祝福されました。すると、B君への乱暴がなくなりました。
(2)スケート教室でのこと。初体験のA君は転んでばかりです。一方、今まで消極的だったB君は生き生きと滑っています。その上、A君に優しく教え始めました。
二人のがんばりを皆で喜びました。この様子をそれぞれの母親にも伝え、二人の成長を共に喜ぶことができました。
 
20年後「先生、僕はAです」。夜中、警備保障会社から教頭の私にかかった電話は、彼からでした。また、B君は地域ボランティアとなり、障碍者作業所で生き生きと働いていました。私を育ててくれた教え子に感謝しています。 

(『学校のちょっといい話』より)