「受けとめ方」を変える
毎日の生活の中で起こる出来事は、必ずしも自分にとって都合のよいことばかりではありません。時には納得のいかない事態に直面することもあるでしょう。不本意であってもその出来事と向き合い、目の前の事に当たっていかなければならない――そんなとき、どのようにしてこれを乗り切ればよいのでしょうか。
■どうして自分だけ……
あるメーカーに勤務するMさん(32歳)は、営業部の主任として、忙しい毎日を送っています。しかも仕事が立て込んでいるときに限って、上司から別の仕事を言いつけられるのです。
はじめは張り切っていたMさんも、立て続けに仕事が舞い込むと、“面倒だな”という後ろ向きの気持ちがわいてきます。最近では、こんなふうに思うようになりました。
“ほかにも人はいるのに、どうして自分だけ……”
■期待されているから頼まれる?
仕事であれ、勉強であれ、私たちの日常には「たとえ気が進まなかったとしても、どうしてもやらなければならないこと」があるものです。
そんなとき、義務感だけでいやいやそれをこなそうとするのでは、どうしても気持ちが重くなるでしょう。同じ「やらなければならないこと」であるのなら、その出来事にも何かしらの意味を見いだして、明るく前向きに受けとめたいもの。そのためにも、自分自身の「受けとめ方」にほんの少しだけ今までとは違った意識を向けてみてはいかがでしょうか。例えば……
◯この仕事ができたら、自分はもっと成長できる
◯忙しいときこそ、時間管理能力を身につけるチャンス
◯自分への期待を込めて、仕事を任せてくれている
同じような状況で同じような出来事に遭遇したとしても、その出来事の受けとめ方は、人によって異なるものです。一つ一つの出来事と、それに対する自分自身の心の動きは、小さなことのようであっても、それが積み重なり、習慣となっていけば、人生そのものにも大きな影響を及ぼすのではないでしょうか。
■別の角度から見つめ直す
「自分の人生の中で起こった出来事」は、よいことであっても悪いことであっても、自分自身の責任で受けとめるしかありません。
中には「無意識のうちに招いてしまった事態」も「直接的には自分の責任ではないこと」もあるでしょう。そうした事態に悩み苦しみ、“どうして私だけが” “あの人のせいでこうなったんだ”などという被害者意識に陥りそうになったときは、ひと呼吸置いて周りをゆっくりと眺めてみましょう。
自然環境や社会をはじめとして、自分を支えてくれている多くの物事。周囲の人たちが何気なくしてくれている心配り。不都合と感じる物事の中に見いだしたプラスの側面……。これらは物事を、あるいは人間関係を、別の角度から見つめ直すことで得られる「気づき」といってよいでしょう。
その小さな気づきから“ありがたい”という感謝の気持ちが芽生えたとき、心の中に余裕が生まれ、元気が出てくるのです。
そして、物事のプラスの側面に気づくことが多くなるほど、“いやだ”と思うことは少なくなり、楽しみや喜びを感じる時間が増えていくことでしょう。
そうした心の習慣が、納得できない出来事に遭遇した際も、事実を冷静に受けとめたうえで前向きに対処していける「強さ」をもたらしてくれるのではないでしょうか。
(『ニューモラル』544号より)