主体的に受け止める

私たちの生活の中では、すべて自分の思うように事が運ぶとは限りません。時には、不運と思える出来事が次から次へとやってきて、“どうして自分だけがこんな思いをしなければならないのか”と感じることもあるでしょう。自分の身に降りかかる出来事をしっかりと受けとめて、自分自身の人生を切り開いていくためには、どのように考えたらよいのでしょうか。

■心を変える言葉の力

例えば、職場をはじめ、家庭や地域などの「自分自身の活躍の場」において、与えられた仕事に不満を感じてしまうとき、それが高じて、誰かを恨みたいような気持ちになってしまったとき…
その状況を乗り切る手がかりが、講演録『ツキを呼ぶ魔法の言葉』(とやの健康ヴィレッジ刊)がベストセラーとなった五日市剛(いつかいち・つよし)さんのお話の中にあります。

○いやなことが起こったら「ありがとう」
○うれしいとき、楽しいときには「感謝します」

これは、旅先のイスラエルで偶然出会ったおばあさんから教わった言葉についての紹介です。この二つのありふれた言葉が、折に触れて自分自身につぶやくことで、「魔法の言葉」になるということです。
五日市さんは言います。「ピンチやいやな出来事に感謝して呼吸を整えていくと、不思議とそれ以上、いやな気分にはなりません。なぜかいい知恵がわいてきやすくなりますし、次の一手が浮かぶことも。それをタイムリーに行動に移すと、どんなことでも意外と簡単に乗り越えられるようになるものです。難題そのものに感謝して乗り越えると、それは大きな自信になります。すると精神的にも成長でき、同じミスは犯さなくなります。だから、難が有ることは、文字どおり『有り難い』わけです」
(参考=五日市剛著『なぜ、感謝するとうまくいくのか』マキノ出版刊)

私たちは、いやな出来事に直面すると、心の中が「いやな思い」で満たされてしまいます。そんな思いを抱いたまま次の行動に移ると、うまくいかないことも多いでしょう。そこであえて「ありがとう」という感謝の言葉を口にすることで、自分自身の心を前向きに転じるきっかけがつかめるのではないでしょうか。
また、日々の生活の中にある一つ一つの物事を「当たり前」と考えると、それが欠けたときに不満を生じやすいものです。しかし「すべての物事に感謝する」という基本姿勢があれば、「今の生活があるのも、いろいろな人のおかげ」というように、「当たり前の中にある有り難さ」にも気づくことができるでしょう。

■感謝の心で受けとめて

人生を送るうえでは、必ずいろいろな問題に直面するものです。そこには、無意識のうちに招いてしまった問題も、自分には直接責任のない問題もあるでしょう。しかし、いずれにしても、私たちは時間をさかのぼって人生をやり直すことはできません。また、他の人に自分の境遇を代わってもらうこともできません。
「問題に直面した」という事実が変えられないのであれば、文句や愚痴を言うのではなく、むしろその問題を主体的に受けとめ、前向きな気持ちで事態の改善に取り組みたいものです。思いがけない困難や不運をも「自分の人生を好転させるきっかけ」として、感謝の心で受けとめる人は、いかなる逆境にあっても力強く生き抜くことができるでしょう。
そのような歩みを続けていったなら、時間を経て、冷静に振り返った際に「あの出来事があったからこそ、今の自分がある」と思えるときが来るのではないでしょうか。
(『ニューモラル』572号より)