地域のつながりを次代へ

少子高齢化をはじめとする社会の変化の中で、地域での人と人とのつながりや助け合いの大切さが、今、あらためて見直されてきています。困ったときにも支え合うことのできる「安心で住みよい地域」をつくり、これをまた次の世代にも受け継いでいくためには、住民一人ひとりの意識を高めることが不可欠です。今回は「地域のつながり」の育み方について、考えていきましょう。

 

■お互いさま、おかげさま

近年、「地域のつながり」の大切さを見直す動きが、全国各地で見られるようになりました。特に平成23年の東日本大震災以降、ふだんから心を通わせ合う温かい人間関係があってこそ、非常時の助け合いにも大きな力が発揮できることを、多くの人が実感したためでしょう。
また、「井戸端会議が盛んな地域は空き巣等の被害に遭いにくい」ともいわれます。「地域のつながり」は、困ったときの助け合いだけでなく、日常のさまざまな場面で安心や安全を生むのです。

現在、祭りのような伝統行事や交流・親睦を目的としたイベントだけでなく、福祉や環境美化、防犯等、地域を支える活動が各地で行われています。こうした活動に参加する有志の間でしばしば聞かれるのが「お互いさま」「おかげさま」という言葉です。そこには“自分もいろいろな人のお世話になっているから、できることはさせていただこう”という「恩返し」の気持ちが感じられます。

 

■次の世代を育てる

こうしたつながりの中でも特に大切にしたいのが、世代を超えた「縦のつながり」です。
かつての日本の地域社会では、自分の子であるかないかにかかわらず、子供が悪いことをすれば大人が注意をし、危険がないように見守るという連帯感や教育力がありました。しかし都市化が進む中では、人と人とのつながりが薄れてきたことを危惧する声が聞かれ、教育力再生のための取り組みも推進されています。
最近では、子供たちの登下校の見守り活動や防犯パトロール活動に、地域の大人、特に高齢者の活躍する姿が見られるようになりました。子供たちの登下校の時間に合わせて、散歩や家の周辺の清掃をしているという方もあります。

しかし、何より大切な第一歩は、子供も含めたごく身近なご近所の人たちと、日ごろから「おはようございます」「こんにちは」といった明るい挨拶を積極的に交わし、安心のある温かい人間関係を築いていくことでしょう。そして、古くからの住民が多い町にも、比較的新しくできた町にも、それぞれに成り立ちがあり、その地域づくりに貢献してきた先人たちの存在があります。

先人から受け継いだ地域を、よりよい形で次の世代に引き渡していくこと──それは、その地域で暮らすすべての人の務めです。そうした意識を持つ大人たちの後ろ姿があってこそ、子供たちも自然と自分の町に対する愛着や誇りを持ち、「地域を支える一員」として育っていくのではないでしょうか。

(『ニューモラル』552号より)